先月、大学時代からの友人とランチをしていたら、「3日連続で赤ちゃんを抱いてる夢を見て、ちょっと怖い」と相談された。
彼女はまだ独身で、結婚予定もない。妊娠の心当たりはもちろんない。なのに夢の中の赤ちゃんはやけにずっしりしていて、目の色まではっきり覚えているらしい。「これって何かの予兆?」と聞かれて、私は少し考えてから「予兆というより、いまの自分の物語の主役交代かもね」と答えた。
ちょっとカッコつけすぎたかもしれない。でも、夢占いを6年やってきていちばん腑に落ちている解釈は、たぶんこれに近い。
赤ちゃんの夢で検索してこの記事にたどり着いた人、ひょっとして似たような戸惑いを抱えているかもしれない。今日はそのあたりを、私なりに丁寧に書いてみる。
赤ちゃんの夢って、どう読まれているんだろう
赤ちゃんは、夢占いのなかでも特に「象徴の宝庫」と呼ばれるモチーフ。理由は単純で、赤ちゃんという存在そのものが「始まり」「成長」「未来」「無垢」「責任」など複数の意味を同時に含んでいるから。
ユング派の心理学では、赤ちゃんは「内なる子ども(インナーチャイルド)」として扱われたり、新しい人格や可能性の象徴として読まれたりする(ユング『元型論』みすず書房, 1999, ほか)。フロイトの『夢判断』(岩波文庫, 1969)になると、もっとストレートに性的なメタファーとして解釈されることもあるけど、現代の日本の夢占いではユング派寄りの「新しいはじまり」説をベースにした解説が主流。
私自身の感覚としては、赤ちゃんの夢を見たクライアント(と呼ぶほどでもないけど、相談に乗った友人たち)の8割は、現実で「何かを始めようとしている」「何かを終わらせて新しいフェーズに入ろうとしている」最中だった。
予兆というより、無意識の側で「次の自分」がすでに育ち始めている、という感じ。
シーン別、私が特に印象に残っている解釈
代表的なパターンを3つ。ぜんぶ網羅じゃなくて、相談の多かった順に。
1. 赤ちゃんを抱いている夢
冒頭の友人のパターン。一般的な夢占いでは「責任を引き受ける覚悟」「新しいプロジェクトや関係性を育てたい気持ち」のあらわれと読まれる。
赤ちゃんの重さがリアルだった、というのも実は意味があると言われていて、「重み=引き受けるものの大きさ」を体感的に感じている、という解釈。彼女はちょうど転職活動中で、大きめのポジションのオファーを受けていた。話を聞きながら「あ、それ全部つながってるね」と笑い合った。
ちなみに、知らない赤ちゃんを抱く夢と、知っている赤ちゃん(甥姪など)を抱く夢では、ニュアンスがちょっと変わる。知らない赤ちゃんは「未知の可能性」、知っている赤ちゃんは「すでに自分の中で育っている計画」のことが多い、と個人的には感じている。
2. 赤ちゃんが泣いている夢
これはちょっと辛い夢。「ケアできていないものがある」サインと読まれることが多い。
ここでいうケアできていないものは、必ずしも誰か他人のことじゃない。むしろ多くの場合、「自分自身の中の何か」──まだ世話されたがっている古い感情、満たされていない欲求、見て見ぬふりをしている疲労。
私自身、20代後半に「赤ちゃんが泣いているのに自分が動けない」夢を何度か見た時期があって、いま振り返ると、あれは典型的な燃え尽きの一歩手前だった。あの夢を「予兆」として真に受けて、当時の私はやっと有給を取った記憶がある。
3. 赤ちゃんが笑っている・かわいい夢
これは比較的シンプルに「吉夢」と読まれることが多いパターン。新しい計画や人間関係の芽生えに、無意識が「いい感じだよ」とゴーサインを出している──という解釈。
ただ、こちらも油断しないでほしいのは、笑っている赤ちゃんの夢を見たからといって、現実で何もしなくていいわけじゃないこと。夢はあくまで地図であって、歩くのは現実の自分。
「妊娠の予兆?」という疑問について、正直なところ
赤ちゃんの夢でいちばん多い質問が、これ。
民俗学的には「赤ちゃんの夢は妊娠の暗示」という言い伝えが日本各地にある(柳田國男『夢の話』など参照)。実際、ご本人や周囲に妊娠が起きるタイミングで赤ちゃんの夢を見た、という体験談は珍しくない。
ただ、私の感覚として正直に書くと、「赤ちゃんの夢を見たから妊娠する」という因果関係は、ちょっと過大評価されすぎている気がする。むしろ「妊娠を意識し始めた人が、無意識でその準備を始めて、結果として赤ちゃんの夢を見る」という順番のほうが、しっくりくるケースが多い。
なので、妊娠予定のない人が赤ちゃんの夢を見たからといって、深刻に受け止める必要はない。ほんとうに気になる場合は夢の解釈ではなく、現実的な検査で確認するのが安心。
私自身の夢日記から、ひとつだけ
3年前、独立してフリーランスになる直前の1週間、私は毎晩のように小さな赤ちゃんを世話する夢を見ていた。
夢の中の赤ちゃんは私のことを母親だと思っているらしく、ずっと私の腕の中で安心しきって眠っている。重くて、温かくて、起きると不思議とエネルギーが満ちていた。
いまならわかる。あれは「これから自分で育てる、私自身の新しい仕事」が、夢の中で先に姿を見せていた。
参考までに、河合隼雄『無意識の構造』(中公新書, 1977)でも、人生の転換期には特定のシンボル(赤ちゃん・水・家など)が連続して夢に現れる傾向がある、と書かれている。私の体験はその典型例だった。
夢を見たあとに、できる小さなこと
赤ちゃんの夢を見たら、責めずに3つだけ。
– 起き抜けに「いま、私のなかで育ちつつあるものは何だろう?」と1問だけ自分に聞く
– 答えが出なくてもOK。出ない場合は、ここ1〜2ヶ月のスケジュール帳をぱらっと見返してみる
– 泣いている赤ちゃんの夢が続く場合は、ちゃんと休む。自分自身の「ケアされたい部分」へのサインかもしれない
3つ目だけは本当に念を押したい。気力が落ちている時期や、寝ても疲れが取れない期間が長く続く場合は、夢の解釈と並行して、心療内科や内科の受診も検討してみてください。
ちょっとした余韻として
冒頭の友人は、その後オファーを受けて新しい職場に移った。赤ちゃんの夢はその月の終わりからぴたっと止んだらしい。「あの子、ちゃんと育ったってことかな」と笑っていた。
赤ちゃんの夢は、たぶん「未来への招待状」みたいなもの。怖がる必要はなくて、ただ静かに、いま自分の中で何が育ちつつあるのかを、ひと呼吸ぶんだけ気にかけてあげればいい。
今朝、もし小さな手の感触が記憶に残っているなら、それはあなたの新しい何かが、すでに動き始めているサインなのかもしれません。
【この記事を書いた人】
ペンネーム:あまね
夢日記歴:6年
得意領域:恋愛・人間関係・転機の夢
参考にしている本:ユング『元型論』、フロイト『夢判断』、河合隼雄『無意識の構造』、柳田國男『夢の話』
ひとこと:自分の夢を5年以上記録するうちに、「夢はその日の心の地図」だと感じるようになりました。
【免責事項】
本記事は夢占い・夢分析の一般的な解釈と、書き手個人の経験に基づくものです。医学的・心理学的な診断ではありません。妊娠の有無については、夢の解釈ではなく医療機関での検査でご確認ください。気分の落ち込みが続く場合は、心療内科などの専門医療機関、または公的相談窓口(よりそいホットライン 0120-279-338)をご利用ください。
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