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追いかけられる夢を見続けた1ヶ月、私が向き合ったもの

2026年06月06日 | 夢占い

去年の秋、私は1ヶ月ほど「追いかけられる夢」ばかり見ていた時期がある。

毎回、相手の顔は見えない。誰だかわからない黒い影みたいな存在で、足音だけが妙にはっきりしている。私はいつも逃げている途中で目が覚めて、心臓だけ全速力のまま朝を迎える。週に4〜5回、ひどい週は毎晩。

最初は「最近ホラー映画見すぎたかな」くらいに思っていた。でも2週間続いた頃、さすがにしんどくなってきて、本棚から夢分析の本を引っ張り出した。

同じような夢にうなされている人、たぶん、思っているより多い。今日は当時の私の経験と、いま読み返しても腑に落ちる解釈をいくつか紹介してみる。

追いかけられる夢の、基本的な見方

夢占い・夢分析の世界では、追いかけられる夢は典型的な「不安夢」のひとつとして扱われている。多くの解説書に共通して書かれているのは、「追ってくる相手」より「逃げているあなた自身」のほうに意味の重心がある、という見方。

ユング派の分析家アン・ファラデイは『夢の力』(産業能率大学出版部, 1976)のなかで、追いかけられる夢を「自分自身のなかで認めたくない感情や欲求が、追跡者という形で現れる」と説明している。シャドウ──ユング心理学でいう「自分が見たくない側面」──を投影した姿、という解釈。

これを読んだとき、私はちょっと身構えた。自分の見たくない部分が追いかけてくる、って、けっこう手厳しい話だから。でも同時に、納得もした。あの黒い影が私の知らない誰かではなく、私の中の何かなら、足音があんなにリアルだった理由も説明がつく気がして。

もちろん全部の解釈をユング派で読む必要はない。「ただストレスで脳が興奮しているだけ」「寝る前のスマホ・カフェイン」みたいな生理学的な理由も大きい。複数のレイヤーが重なって、ひとつの夢が現れていると考えるほうが現実的だと思う。

「誰に」追いかけられているかで、ちょっと変わる

ぜんぶは紹介しきれないので、相談を受けることの多い3パターンだけ。

1. 顔の見えない人・黒い影に追いかけられる夢

私が見ていたのはこのタイプ。

夢占いの一般的な解釈では、「自分でも正体のつかめない不安」「漠然としたプレッシャー」のあらわれ、とされることが多い。仕事の漠然とした将来不安、なんとなく続いている人間関係のストレス。輪郭がはっきりしないからこそ、夢の中でも輪郭のない影として現れる──というのは、けっこう詩的だけど、的を射ている気がする。

私の場合、当時は転職するか迷っていた時期で、「決められない自分」を直視したくなかった。影は、その「直視したくない私自身」だったのかもしれない。

2. 知っている人に追いかけられる夢

家族、上司、友人、元恋人。具体的に顔の見える誰かに追いかけられている場合、夢占いでは「その人物との関係性に、未消化のものがある」と読まれることが多い。

ただ、その夢を見た翌日にその人に攻撃的になる必要はない。むしろ、その人と接するときの自分が、いつも以上に身構えていないか観察してみるのが先。私は一度、上司に追いかけられる夢を見て「私、この人にこんなに気を遣ってたんだ」と気づいたことがある。

3. 動物・モンスターに追いかけられる夢

蛇、犬、得体の知れない大型動物、ホラー映画みたいな怪物。これは「自分の中の本能的な感情」が手に負えなくなっているサイン、と解釈されることがある。

怒りや嫉妬、性的衝動。普段抑えている強い感情ほど、夢の中では大きな姿で現れる──と読むと、ちょっと納得できる。

なお、蛇に追いかけられる夢については、当サイトで「蛇の夢」を別記事に詳しくまとめているので、そちらも参考にしてみてほしい。

「逃げ切れたか」「捕まったか」も意味が違う

これも面白いポイント。

逃げ切れる夢:問題に対処する力がまだ残っているサイン、と読まれることが多い
捕まる夢:「逃げきれない」と自分でも気づき始めている、転換点のサイン
戦って勝つ夢:めずらしいけど、状況に立ち向かう覚悟ができた合図と解釈されることがある
目が覚めて終わる夢:私のパターン。問題が「保留中」になっている

私はずっと「目が覚めて終わる」だった。つまり、心の中の問題を1ヶ月、毎晩保留にし続けていたわけで、書き出してみるとちょっと笑ってしまう。

あの1ヶ月、私が実際にやったこと

夢分析の本に書いてある「対処法」は、正直、効くものと効かないものがあった。私の場合に効いたのは、地味だけど3つ。

ひとつ目は、寝る前の30分をスマホ断ちにしたこと。これだけで夢の鮮明さがちょっとマイルドになった気がする。生理学的な処方箋として、夢分析の前にまずやる価値はある。

ふたつ目は、起きた直後に夢の内容を1行だけメモすること。誰に追いかけられたか、どこから逃げたか、起きたときの感情。書くという行為そのものが、追いかけてくる何かに名前を与えてくれる。名前のついた影は、ちょっとだけ小さくなる。

みっつ目は──これがいちばん効いた──「いま、私は何から逃げているんだろう?」を、紙に書き出して自分に聞いてみたこと。出てきた答えは「転職」だった。それを認めた次の日から、影の夢はぱったり減った。完全には消えなかったけど、週1くらいに落ち着いて、転職を決めたあとには見なくなった。

参考までに、河合隼雄『無意識の構造』(中公新書, 1977)にもあるように、夢は「無意識からの問いかけ」だと捉えると、答えを返した瞬間に夢は役目を終える、という見方ができる。実感としてはまさにそうだった。

夢を見たあとに、できる小さなこと

もし最近、追いかけられる夢が続いているなら、責めずに3つだけ試してみてほしい。

– 起き抜けに「いま、何から逃げたかった?」と自分に1問だけ聞いてみる
– 答えが出なくてもOK。出ない場合は「保留中の問題があるな」と認識するだけで十分
– どうしてもしんどい夜が続くなら、心療内科や睡眠外来の受診も選択肢

最後の点だけは念のため強めに。睡眠中に毎晩強い不安にさらされる状態は、心身どちらにも負担が大きい。夢占い的な意味づけと、医療的なケアは別物として持っておいていい。

ちょっとした余韻として

追いかけられる夢って、起きた瞬間はほんとうに嫌な感じがする。でも、いま振り返ると、あの1ヶ月の影は、私にとって「気づきの郵便配達員」だった。

逃げる足音は、ほんとうは「立ち止まって」の合図だったのかも。

今朝もし同じ夢で目覚めたなら、ベッドの中で一回だけ深呼吸して、「私、いま何から逃げてる?」と、ほんの少しだけ自分に聞いてみてください。

【この記事を書いた人】
ペンネーム:あまね
夢日記歴:6年
得意領域:不安系の夢・人間関係の夢
参考にしている本:アン・ファラデイ『夢の力』、河合隼雄『無意識の構造』、ユング『元型論』
ひとこと:自分の夢を5年以上記録するうちに、「夢はその日の心の地図」だと感じるようになりました。

【免責事項】
本記事は夢占い・夢分析の一般的な解釈と、書き手個人の経験に基づくものです。医学的・心理学的な診断ではありません。睡眠中の強い不安、入眠困難、悪夢の継続が2週間以上続く場合は、心療内科・睡眠外来などの医療機関にご相談ください。緊急時は「よりそいホットライン 0120-279-338」もご利用いただけます。

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